ライトノベルで読書感想文はアリなのか?意外と知らないライトノベルとは

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経済産業省や全国出版協会などの発表を見ると、日本国内における出版業界のピークは1990年台の後半で、当時の市場規模は約2兆6000億円でした
現在も減少は続いています。

こうした中で、比較的元気なのが、漫画と文庫本です。
ただしあくまでも「他ジャンルに比べて」というだけであって、漫画でも雑誌の売上は大きく減少しており、コミックスの売上も減少傾向にあります。

そんな中、特筆すべき存在であるのが「ライトノベル」です
「ライトノベル(ラノベ)」という言葉、聞き慣れない方も多いかと思います。
「ライトノベル」って一体何なのでしょうか?

参考:日本の出版統計(全国出版協会 出版科学研究所)

「ライトノベル」で読書感想文はアリ?

「ライトノベル」は「ジャンル」ではない

「ライトノベル」は、「軽い」という意味の「light」と小説を表す「novel」を合わせた和製英語ですが、「この条件を満たせばライトノベル」となる確たる定義があるわけではありません

実際、ライトノベルと呼ばれる作品には、恋愛モノやSFモノ、ミステリーやホラーなど様々なあらゆるジャンルのものが含まれています

そこで、敢えて大まかなくくりで表現すると、「10代、20代を対象読者とした軽めな内容の小説」といったところでしょうか。
2004年に発行された『ライトノベル完全読本』(日経BP社)では「カバーや挿画にイラストを多用し、主として文庫の形で出版されている若年層を対象とした小説」と定義されていました。

全国出版協会が発行する出版月報によると、ライトノベルの市場規模は2012年の284億円をピークに2年連続で減少しているというデータになっています。
その一方でオリコンの調査では、ライトノベルの年間売上は2014年が約327億円と過去最高になっているそうです。

この辺りの差異は、電子書籍の取り扱いや、どの出版社のどんなレーベルをライトノベルに含むかによると考えられます。

ただ縮小著しい出版業界において、漫画とともにライトノベルの存在が大きなものになっているのは間違いないようです

2010年代後半にも新たなライトノベル専用レーベルが新たにスタートしており、いわゆる一般文芸の作家の作品をライトノベル化したり、さらに「小説投稿サイト」に投稿された小説を書籍化したりと、新たな流れも含み大きくなっているくくりであると言えるでしょう。

参考:出版月報 2015年3月号『特集 2014年文庫本マーケットレポート』ライトノベル関連(Matsuの日記)
   ライトノベル市場規模の話(この世の全てはこともなし)

ライトノベルで読書感想文?

学生にとって、昔から定番の宿題のひとつが「読書感想文」です。
夏目漱石や芥川龍之介の作品に苦しみながら感想文を何とか書き上げた記憶がありますが、この読書感想文の「お題」にライトノベルを取り上げて良いのか、悩んでいる人が多いようです

例えば、相談サイトで有名な「ヤフー知恵袋」で「ライトノベル 読書感想文」と検索すると、400件近い相談が寄せられていることがわかります。そのうち3分の2くらいが「ライトノベルで読書感想文を書いても良いですか?」のような質問で、ザッと見たところ2010年頃からこの手の質問が増えています。

ちなみに、質問に寄せられる回答は大きくわけて2パターン
ひとつは「ライトノベルで読書感想文なんてやめておけ」というもの。「読書感想文らしい文学作品を読め」とお説教をする方や、「個人的には自由だと思うけど評価を考えると・・」となんとなくライトノベルを見下げる方などが学生の悩みを潰しにかかります。

一方もうひとつは、「応援型」とも言うべき回答。「先生に相談した上で自分の書きたい題材を決めたほうが良い」とか「自分の好きを貫くべき」とか、質問者の気持ちを盛り上げる回答をする人たちもいます。

そもそも、このようなサイトに、こうした質問が多く集まるのが「ライトノベルならでは」だなとも感じますね

学生さんたちが悩んでいる「ライトノベルで読書感想文はアリなのか問題」。知恵袋を見ていると、ライトノベルというものが学校という場で受け入れられるのかが不安視されているような印象を受けますが、実際はどうなのでしょうか?学校で読まれている本のデータがあったので、そちらを見てみましょう。

朝の読書で「ライトノベル」

書籍取次大手のトーハンは、全国の小中高校で行われている「朝の読書」運動を支援しています2019年5月時点で、全国の26,822校で実施されているそうです
その「朝の読書」で人気の本が毎年トーハンから発表されており、2018年度の「朝の読書」でよく読まれた本もトーハンのサイト内で紹介されていましたので、中学校・高校で読まれた本として挙げられているものを、少し多いですが以下にまとめてみました。

なおこちらに挙げられている本は、各学校に対し「朝の読書推進協議会」が定期的に実施している「朝の読書実態調査」における「学校図書館貸出ベスト5」の回答をまとめたものだそうです。

2018年度「朝の読書」で読まれた本

【中学校】

  • 「表参道高校合唱部!」シリーズ(櫻井剛 脚本・桑畑絹子 小説・学研プラス)
  • 「5分」シリーズ(河出書房新社)
  • 「5分後に意外な結末」シリーズ(学研プラス)
  • 「都会のトム&ソーヤ」シリーズ(はやみねかおる・講談社)
  • 「ぼくら」シリーズ(宗田理・KADOKAWA ポプラ社)
  • かがみの孤城(辻村深月・ポプラ社)
  • か「」く「」し「」ご「」と「(住野よる・新潮社)
  • 騎士団長殺し 第1部・第2部(村上春樹・新潮社)
  • 君の膵臓をたべたい(住野よる・双葉社)
  • コーヒーが冷めないうちに(川口俊和・サンマーク出版)
  • 「図書館戦争」シリーズ(有川浩・KADOKAWA)
  • 僕はロボットごしの君に恋をする(山田悠介・河出書房新社)
  • 「LV999の村人」シリーズ(星月子猫・KADOKAWA)
  • 青空エール 映画ノベライズ(下川香苗 著・河原和音 原作・持地佑季子 脚本・集英社)
  • アオハライド 1~6(阿部暁子・咲坂伊緒 原作・集英社)
  • 「王様ゲーム」シリーズ(金沢伸明・双葉社)
  • 「かくりよの宿飯」シリーズ(友麻碧・KADOKAWA)
  • 「神様の御用人」シリーズ(浅葉なつ・KADOKAWA)
  • 「ゲーマーズ!」シリーズ(葵せきな・KADOKAWA)
  • 「告白予行練習」シリーズ(Honey Works 原案・香坂茉里、藤谷燈子・KADOKAWA)
  • 「ゼロの使い魔」シリーズ(ヤマグチノボル・KADOKAWA)
  • 「ソードアート・オンライン」シリーズ(川原礫・KADOKAWA)
  • 暗殺教室 殺すう まるごと中学基礎数学(松井優征 原作・日下部匡俊 小説・東京大学数学対策チーム 数学監修・集英社)
  • 「銀魂 3年Z組銀八先生」シリーズ(空知英秋、大崎知仁・集英社)
  • DEATH NOTE Light up the NEW world(大場つぐみ、小畑健 原作・真野勝成 脚本・日下部匡俊 小説・集英社)
  • 大家さんと僕(矢部太郎・新潮社)
  • 鉄道を科学する 日々の運行を静かに支える技術(川辺謙一・SBクリエイティブ)
  • ネイマール 父の教え、僕の生きかた(ネイマール、ネイマール・ジュニア・竹澤哲 訳・徳間書店)
  • 「爆笑テストの珍解答」シリーズ(鉄人社編集部 編・鉄人社)
  • 漫画 君たちはどう生きるか(吉野源三郎 原作・羽賀翔一 漫画・マガジンハウス)

【高校】

  • 「5分」シリーズ(河出書房新社)
  • 「オーバーロード」シリーズ(丸山くがね・KADOKAWA)
  • かがみの孤城(辻村深月・ポプラ社)
  • 神様のカルテ(夏川草介・小学館)
  • 君の膵臓をたべたい(住野よる・双葉社)
  • 恋空 切ナイ恋物語 上・下(美嘉・スターツ出版)
  • 植物図鑑(有川浩・KADOKAWA・幻冬舎)
  • そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ・文藝春秋)
  • 旅猫リポート(有川浩・講談社)
  • 誰も死なないミステリーを君に(井上悠宇・早川書房)
  • 魔力の胎動(東野圭吾・KADOKAWA)
  • 夢幻花(東野圭吾・PHP研究所)
  • 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話(坪田信貴・KADOKAWA)
  • 「キノの旅」シリーズ(時雨沢恵一・KADOKAWA)
  • こころ(夏目漱石・新潮社)
  • その白さえ嘘だとしても(河野裕・新潮社)
  • 小説 君の名は。(新海誠・KADOKAWA)
  • 「響け!ユーフォニアム」シリーズ(武田綾乃・宝島社)
  • 恥知らずのパープルヘイズ ジョジョの奇妙な冒険より(上遠野浩平・荒木飛呂彦 原作・集英社)
  • プリンシパル 恋する私はヒロインですか?(いくえみ綾 原作・山本瑤 著・集英社)
  • 悪の教典①~⑨(貴志祐介 原作・烏山英司 画・講談社)
  • 博士の愛した数式(小川洋子 原作・くりた陸 漫画・講談社)
  • あさきゆめみし 源氏物語(大和和紀・講談社)
  • 「はたらく細胞」①~⑤(清水茜・講談社)
  • いきなりサイエンス日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します(ミッチェル・モフィット、グレッグ・ブラウン・西山志緒 訳・文響社)
  • O型自分の説明書(Jamais Jamais・文芸社)
  • 漫画 君たちはどう生きるか(吉野源三郎 原作・羽賀翔一 漫画・マガジンハウス)
  • 「ざんねんないきもの事典」シリーズ(今泉忠明 監修・高橋書店)
  • 寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑(やまぐちかおり 絵 いろは出版 編著・いろは出版)
  • マンガでやさしくわかるアドラー心理学(岩井俊憲、星井博文 シナリオ制作・深森あき 作画・日本能率協会マネジメントセンター)

中学校が8,400校、高校が2,200校あるので「よく読まれた本」もすごい量になりますが、中学・高校両方のリストに共通点が見えてきます。
それが、出版社の「KADOKAWA」です。このKADOKAWAから出版されている作品のほとんどは、同社内のライトノベルレーベルから発売されています。また、KADOKAWA以外でもライトノベルの作品が散見されます。

先ほど紹介したように、ここに挙げられているのは「学校図書館貸出ベスト5」の回答から作成されたリストです。
つまり、現在の学校図書館には、これだけ多くのライトノベルが所蔵され、貸し出されているということなのです。

これだけ市民権(?)を得られているのであれば、「ライトノベルを読書感想文のお題にすること」は認められても良いと考えても良いのではないでしょうか?

参考:平成29年度『朝の読書』の人気本調査結果発表(トーハン)

大事なのは、ちゃんと読書感想文を書くこと!

筆者は、読書感想文を書くのに「良い本」「悪い本」はないと考えています。自分が好きな・読みたいと思った本を読んで、そしてどう感じたのか、何を思ったのか感想をまとめられれば、魔法界の戦争を描いたものでも、恋愛に苦しむ学園モノでも何を読んでも良いと思うのです

ただし、「面白かった」だけではやはりダメです。これでは、ただの「感想」。「なにが面白かったのか」「どう面白かったのか」を織り込んだ「感想”文”」である必要があると思います。では「感想」と「感想文」の違いはどこかといえば、それは「人に読ませるもの」であることではないでしょうか

そこで、「読書感想文」とは、「自分が読んだ本を、相手にオススメする文章」だと考えてみるのです。

例えば、好きなラーメンを友だちにすすめるときには「どこにあるお店の何というラーメンが、スープがこうで麺がこうで、具がこうだから美味しいんだよ食べてみて」と具体的に場所や味を伝えますよね。それと同じように、どういうお話で、どこが面白くてどこに自分が感銘を受けたのかを感想文の読み手に伝えることができれば、良い読書感想文だと言えるはずです。

であれば、もちろん夏目漱石や芥川龍之介を読んで感想文を書くことも良いですが、自分の好きなライトノベルを読み手にプレゼンするのも立派な読書感想文ですよね
「ライトノベルを読書感想文にして良いのかな?」と不安になるくらいなら、自分の好きをしっかり詰め込んだ読書感想文を書いてみましょう!

ただ念のため、先生に確認してみることもお忘れなく!!!!そこは責任取れません!!!!

【Q】「ライトノベル」と呼ばれる作品を読んだことはありますか?

読書に関するアンケート

 対象条件:69歳以下のボイスノート会員
 回答者数:1276人(調査日:2019/5/17~21)

ライトノベル、読んだことある?

世代別に「ライトノベル」の読書経験を調査したところ、「よく読む」「読んだことがある」と回答した割合が上のグラフのようになりました。
20代以下が合わせて33.2%で最も多くなりましたが、最も少ない60代でも22.9%と、筆者が予想していた以上に「ライトノベル経験率」は高い結果となりました。

本文中でも触れたように、一般文芸の作家さんがライトノベルを出したり、ライトノベルが実写化されたり、垣根は低くなってきているのかもしれません。
であれば、余計に「ライトノベルが読書感想文には不向き!」とするのは違うようにも思えてきますね!

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